
「服育」とは?服を通じて子供の心はもっと豊かに成長する
「最近、服育という言葉を初めて聞いた」という方も多いのではないでしょうか?
服育(ふくいく)というとなんだか難しそうなイメージかもしれませんが、実は服育とは決して難しいものではなく、むしろ楽しい面を随所に含んでいます。この記事では、服育についての具体的な説明や、服を通じて子供の心をもっと豊かに育むための取り組みや、子供たちと一緒に楽しむためのヒントを紹介します。
目次
「服育(ふくいく)」とは?
近年、子供の成長にとって大切なことを「〇〇育」と名付けて取り組む動きが広まっています。 代表的なところでは「食育」や「脳育」などという言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。それに対して「服育」は、やや耳慣れないと感じるかもしれませんが、約20年前に学校制服メーカーが提唱して活動が始まったという経緯があります。そこから長い年月を経て徐々に浸透していき、現在は多くのファッション・アパレルブランドでの取り組みが拡大しています。 服育を通して子供たちは自らを表現したり、さらに社会とのつながりを感じて成長したりすることが期待できるなど、意義のある取り組みになってきていると言えるでしょう。
衣服は他者や社会へのメッセージ
「衣食住」という言葉が示す通り、衣服は日常生活にとってなくてはならないものです。食事や住居に比べ、衣服を着ることはあまり「学び」と結びつかないかもしれませんが、衣服の身だしなみを整えたりTPOを考慮して服を選択することが、自己表現や思いやりにつながるとしたらどうでしょうか。 たとえば、入学式や入社式でヨレヨレの服を着ていたらやはり身だしなみの面で気まずい思いをしてしまいますし、結婚式に招かれたのに完全な普段着ではお祝いの気持ちを十分に表現しづらいですよね。このように、場面にあった服装は他者へのメッセージや思いやりにもつながるのです。
服育は文化を知るきっかけにも
衣服は歴史や文化とも深いつながりや関わりがあります。 日本では七五三で着る着物や、成人式の振袖や夏に着る浴衣、世界には多様な民族衣装があり、そのスタイルも様々です。たとえばイギリスのスコットランドでは男性が正装としてキルトと呼ばれるスカートと似た衣装を身に着けることが知られています。こういった衣服の違いを話し合うことで、文化や歴史を知るきっかけになります。
服育でSDGsやLGBTQ+への理解も深まる
最近よく耳にするようになったSDGsの取り組みや方針などについてご存じの方も多いと思います。SDGsには17の目標が掲げられており、服の購入や管理、リサイクルなどを通じてSDGsの目標達成に貢献することができます。また、LGBTQ+の人々に対する認識や理解も様々な場面で浸透してきました。近年、学校制服や店舗のユニフォームなどにも性別を尊重して着用できるデザインが増えつつあります。 ニュースや学校の宿題などでこのようなトピックに触れたときには、親子で話し合ってみることで、より服やファッションへの理解が深まるでしょう。
ダイバーシティを考慮した学校制服や店舗のユニフォームのデザインが増えつつある
家庭でできる「服育」
家庭でも衣服やファッションを通して、子供に教えたり一緒に学んだりなどできることがたくさんあります。
健康・安全・快適に過ごす服選びや着方を教える
衣服には様々な役割がありますが、暑さや寒さを調節して、健康を維持するというのはもっとも基本的な働きです。汗や紫外線から子供の肌を守るには、四季折々に合った素材やデザインを知っておく必要があります。また、健康に過ごすため、汚れをそのままにしないで洗って清潔に保つことを教えるのも大切です。
服を通じて、ものを大切にする心を教える
日本は服の廃棄率も高く、その廃棄の後、どのように処分されるのかも問題の論点として注目されています。環境省が日本で消費される衣服と環境負荷に関する調査(2020年12月〜2021年3月の期間で実施)を実施し、廃棄された衣服の内、わずか5%が再資源化、残りの95%は焼却や埋め立て処分されていることがデータとして示されています。衣服を慈しみ、丁寧に心を込めて大事に扱うことも大切な服育の1つです。具体的な取り組みとしては、兄弟姉妹で着回しをしたり、服の素材をリメイクして小物にしたり、地域の催しに出品するなど、衣服の命をつないでいく方法は多様にあります。
TPOに合った服選びや着方を教える
冒頭でも少し述べましたが、TPOに対応した服選びや着方を教えることも服育の要素として重要です。TPOとは、Time(時間)、Place(場所)、Occasion(場合)の頭文字をとった略語で、時と場合・目的に合った服装をすることで自分も過ごしやすく、周囲にも安心感を与えられるということを意味します。子供たちも、成長とともにパジャマのままで遊びに行ったりするのは相応しくないなどということがだんだん分かってきます。
服やファッションの楽しみを教える
毎日のコーディネートを決める時には、子供の意思を尊重して、楽しい気持ちで一緒に選ぶのが良いでしょう。赤ちゃん時代には何を着るかは大人が決めますが、いつまでも子供自身に選ばせないでいると、自主性が育たないばかりか着る楽しみも半減するのではないでしょうか。子供と一緒に服を選ぶ楽しさを共有することで、親自身も楽しく豊かな気持ちを育んでいくことができます。
親子で一緒に服を選んだ楽しい時間は、子供の心にずっと残り続けるかもしれません
アパレル・ファッション企業の取り組む「服育」とは
衣服やファッションを通じて子供たちの豊かな感性や生きる未来を育み守りたいと考える企業や、人と地球環境に配慮した素材や洋服にこだわるブランドも増えています。
フィンランドで数十年以上子供服を作りつづけるブランドReimaでは、子供たちの着るコットンやダウンなどの素材選びにもサステナブルを通した服育の観点を持って取り組んでいます。
人と環境に配慮したオーガニックコットン素材
肌に優しくなじんで負担をかけないオーガニックコットンのワンピースドレス。 伸縮性と通気性に富んでいるため、動きやすく汗をかいてもベタベタせず快適です。
子供たちに、コットンが収穫されて服になるまでのストーリーや、栽培する土地・服を作る人・服を着る子供たちを話して聞かせるのも服育の1つです。
倫理的なダウン素材
ダウンジャケットは、クールなデザインというだけでなく責任あるダウン基準をクリアし、食料の副産物のみを用いたダウン素材を使用するなど環境と倫理に配慮しています。
もし、子供たちが「このフワフワはなに?」とたずねてきたら、生き物とファッションの関係を考える服育のチャンスです。
子供と一緒に楽しみながら服育を取り入れてみよう
今回は、最近耳にするようになった「服育」について、その意味や服育でできることをご紹介しました。
衣服を通して、思いやりを表現したり、異国の文化に触れたりすることができます。
TPOに応じた服装を学ぶことで、状況に応じ臨機応変に衣服を活用した考えができるようになります。
物を大切にする心を学ぶことができます。
家庭での親子の触れ合いが生まれ、より衣服に対して愛着がわいて楽しむことができます。
難しく考える必要はありません。日常の服を選んだり、購入するときに今回紹介したことを思い出してみてください。そして、楽しみながら服育の考え方を伝えていきましょう!